淡水風景(1)
1934年、木板油彩、18.8×23.6㎝、個人蔵
翻譯:富田哲
淡水礼拝堂後方の小山の上に立った陳澄波の目に映る町の風景は、調和のとれたコントラストを呈している。空と川の水面が浅い青緑色である一方、屋根瓦、レンガ塀、木の幹、帆船はどんよりとした紅色だ。淡水特有の潮の香りがする湿った空気が絵の中にわき上がる。岸の景色を描く豪放な線が躍動する一方、遠くの山水はひっそりと押し黙ったままである。川に浮かぶ船が水面に静かに影を映し、木の梢の揺れがそよ風の隠喩になっている。赤色と緑色の融合、動と静の衝突が独特の美感を生み出す。
By 陳韋聿